パラパラパラ、トン
「これは?」
「ダメ!」
パラパラパラ、トン
「じゃ、これ」
「パス!」
パラパラパラ、トン
「えぇ〜と、じゃ、これ」
「却下!」
「それじゃぁ〜」
パラパラパラ、パラパラパラ……
なんで、こんなの見てるのかなぁ……
それもみんな華奢で、どうみても『可憐』って表現がピッタリのものばかり。
自分に似合うと思ってるわけ?
……パラパラパラ、トン
「うぅ〜ん、これ!、かな?」
「No!」
パラパラパラ、パラパラパラ……、トン
「これで決まり!!」
「いい加減にしろ!!」
ベットの上に散らばった雑誌類を投げつける、この”オカマ”に。

そりゃあ、確かに結婚を承諾した、承諾させた?、まぁ、それは……どっちでもいい。
とにかく始めは嘘で誤摩化すはずが、周囲からの反対が強まるほどつい反発したくなり、いつのまにか本気でヨザックと結婚することに全力を傾けていた。
だから全ての問題をクリアしたときの周囲の発言にはもう『好きに言ってくれ』って感じだった。
だって、こんななんだよ!?
『お前、度胸あるなぁ、おめでとう、だよな、やっぱ?……』とか、
『ほんとにコイツでいいんですか?』とか、
『これ以上面倒は起こさないでくれ』とか、
『この日を祝日に!!』とか、
『……(人のことは言えない)……』とか。

で、一応式を上げることにしたわけだが、……甘かった。
こっちでは『神』に誓うという習慣はなく『宣誓式』なんだそうだ。
地球的に言えば『人前結婚式』。
立ち会った人たちに向かって宣誓するんだけど、まぁ、正直ホッとしたのは確か。
だってそうだろ、もし『眞王に誓いを立てる』なんてことになったら?
僕はイヤだね、なんであんな奴に誓わなくちゃいけないんだ。

ということで、公式なことは一切排除、内輪の式と披露パーティってことでとりあえずみんなを納得させた。
別に脅してはいないからね。
それなのに、これはないだろう?
連日連夜、さまざまなウエディングドレス特集の載った雑誌をベットに持ち込んできちゃ、アレだ、コレだと。
『一生に一度』(?)のことだから……と思っていたが、度が過ぎる。
マリッジブルーに陥りそう。

「なんで、ドレスなんだ!?」
「だってぇ〜、結婚の宣誓式ですよぉ?」
「ドレスならいつだって着てるじゃないか!!」
「普通のイブニングドレスならね。でも今回は『ウエディングドレス』なんですよぉ〜?、
スペシャル中のスペシャル!! 気合いが入って当然じゃないっすかぁ?」
女の子なら分かる、いくつになってもウエディングドレスには夢を持つ、だろう、多分。
だが、このやたらとガタイの良い、このオカマまでそうなのか?
「やっぱりぃ〜、純白でぇ〜、可憐でぇ〜、誰もがうっとり見惚れるようなぁ〜、って言うのが理想でしょ?」
それは果てしなく真逆だ。
どんな衣装着たって、ヨザックはヨザックで、どう見ても『可憐』なんて誰も思わない。
いいじゃないか、軍の礼服で。
なかなかステキだと思うけど。
ギャ!! 何を考えるんだ、そういう甘い考えがこのオカマをつけあがらせるんだ。
君のウエディングドレス姿は断固、拒否する!!!
僕のこの決意は昼も夜も渋谷にベッタリ張り付くことで意思表明した。
フォンビーレフェルト卿なんてこの際問題じゃない、僕の一生の問題なんだから。

さすがに一週間近く僕の側に寄れないことにメゲたのか「ドレスを着るのは諦めます」の白鳩便。
やったね!! 何事も始めが肝心だよ。
結局、彼は軍の礼服、僕はいつもの服にマントとちょっと飾りを付けた程度、ってことで決着はついた。

宣誓式を無事に終え、パーティ前にマントと飾りを外そうと部屋に戻ったら、……ベットの上に箱が。
きれいに包装されたその箱を見た途端、……イヤな予感がした。
この大きさは……衣装箱サイズ、……まさかアイツ……。

「うわぁ、緊張したぁ〜」
襟元を緩めながら入ってくるヨザックに、
「これ……なに?」
振り向きもせず、目一杯冷たい声を浴びせかけたが、アイツは気にした様子もなく。
「あ〜、届きましたね。よかった、間に合って!!」
駆け寄って、いそいそと包みを開ける。
出てきたのは、おぞましくも、純白、可憐、誰もがうっとり、のウエディングドレス。
だが……、サイズが違う。
あのオカマのサイズじゃない、どちらかというと……僕?
えぇ〜!?
「まさか、これ?」
「もちろん、猊下のです♪♪」
ウキウキと言うな!!、散々見てたのは『僕の』だったのか!!
怒りに戦慄いている僕の背中にドレスを当てながら、
「サイズはピッタリね、よかったぁ〜。きっとステキよぉ」なんぞとほざいてる。
どうしてくれよう、このオカマ!!
「ヨザック!! 悪夢になりそうなくらい見せつけられたウエディングドレスは君のじゃなかったのか!?」
「ええ、始めはそうでした。」
「始めはぁ?」
「はい♪ でもね、聞いちゃったんです、坊ちゃんに。お国では『お色直し』って儀式があるって。それならパーティはウエディングドレスでもいいんだよなぁ〜、って。」
それは儀式じゃない、単に企業が金儲けするための陰謀だ。
渋谷ぁ〜、ウェラー卿はおろか君までこういうデタラメを吹き込むのか!!
「だからってどうして僕が着るんだ!!」
「だって、俺は着ないってお約束しましたから。それにウエディングドレスは『男の夢』ですもん!! 着るのも、脱がせるのも。」
マジな顔して言い切るな!!
……ハァ……、もう怒鳴る気も失せた。
なんでこんなオカマを選んじゃったんだぁ?
ウエディングドレスに頬をすり寄せ、『ほんともう、幸せ一杯♪』って極上の笑顔を見せているヨザック。
どちらかというと、グリ江ちゃんモード?
うぅ〜ん、どちらにしても彼にこういう笑顔を見せられると……弱いんだよね。
だからといって、ドレス姿を人前に晒すなんてこと、僕に出来るわけないでしょ。
渋谷と違って、僕は知性と良識の持ち主なんだから。
「……考えとく……」
「考えとく、ですかぁ? そう言うときは9割がた返事は決まってるんですよね、『ごめんなさい』って。」
「わかってるならそれでいいじゃん。」
「ダメです!! 絶対ダメ。パーティがダメならその後。俺だけにってことでどうです? ねっ、いいでしょ? お願い、うんって言って!!」
勝手にすればぁ? 着る気なんてないもん。
「さっ、パーティに行くよ。主賓が遅れたらまずいでしょ。」
「いやぁ〜、猊下ぁ〜。お願い、ちゃんと考えてください!!」
ギャアギャア言ってるオカマを残し、さっさとパーティ会場に足を進める。
さて、どーしようかな?
その1、ほんのちょっとだけ着て見せて、生涯尻の下に引いてやる。
……う〜ん、これはもう既にしている……はず。面白くない。
その2、宣誓を取り消して、最短結婚時間の新記録を作る。
……あっ、いいんじゃない? うん、いいよ!
でも、惜しいなぁ〜、それなら公にしておいた方が面白かったのに。
ギネスブックないしなぁ〜、割とつまんないかも。

ねぇ、ヨザック。このパーティの間に僕をその気にさせてごらん。

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