ガチャ。
「やっと主賓がいらっしゃいましたね。」
「遅くなってごめんね、ウェラー卿。」
「村田、早くこっちに来いよ、始められないだろ!!」
「はいはい。」
「あれ、ヨザックは?」
「来ると思うよ?」
「お前ら、もう喧嘩したのかよ?」
「別にぃ~」
「全く、新婚早々なにやってんだよ。」
「まっ、いつものことじゃない。」
「そうだけどさ、今日くらい仲良くしててもいいんじゃない?」
「おや、それは魔王陛下のご命令かな?」
「そんなわけないだろ、あぁ、ヨザックも来たな。
 では、みなさんご静粛にぃ。
 え~、今日は村田とヨザックの結婚披露パーティにお集まりいただき、ありがとうございます。
 それでは二人の前途を祝し、乾杯をしま~す。
 はい、グラスを持ってぇ~」
『乾杯!!』
 立食式のパーティは、そうして始まった。

 参加者が入れ替わり立ち替わり挨拶に訪れ、「おめでとうございます。」「ありがとうございます。」の繰り返し。それが一段落付いてやっと食べ物を口にし始めた頃。
「ねえ、猊下。わたくしそろそろダンスがしたくなりましたわ。」
「はい?」
 あぁ、ダンスリーダーになれってこと……さて、どうしたものか。
「俺が女性パートでもいいですよ?」
 いつもの定位置から声がした。隣でもいいのに、やっぱり斜め後ろに立っちゃうんだね。
 お互いどちらのパートも踊れるから、どおってことはないんだが……。
「じゃ、そうしてもらおうかな。」
 開けた中央にヨザックをエスコートして踊り始める。
 当然、僕が女性パートを踊ると思っていたらしい面々はびっくりしたみたいだ。い~じゃん、どっちだって、楽しく踊れれば。
 
 曲の半分ほどで、ツェリ様はフォンヴォルテール卿を当然のように、フォンビーレフェルト卿は渋谷をむりやり、ウェラー卿はグレタにせがまれて、それぞれダンスの輪に加わった。
「猊下、考えてくださいました?」
「何を?」
「アレ」
「あぁ、アレ。まだ言ってるんだ、着ないって言ったじゃない。」
「う~ん、ど~しても、お願いします!!」
「しつこいなぁ、しつこい男って嫌われるんだよ?」
「俺が今まで猊下に女装なんてお願いしました?」
 女装以外なら、いくつも聞いてきた気がするけど?、もちろん全部叶えたわけじゃないけどね。
「今後二度と言いませんから。お願いです、アレ、着て見せてください。」
「いやにこだわるね。」
「ど~しても見たいんです!!」
「じゃ、その気になるようなこと、言ってみろよ。」
 ヨザックは急に手を持ち替え、今度は僕が女性パート。
 ふぅ~ん、女性パートじゃ口説きにくいんだ。真面目に言うつもりなんだね、それじゃお手並み拝見。
「………………………………….」
 あれっ、口説くつもりじゃなかったの?
「………………………………….」
 なんか……やだな。
「………………………………….」
 ヨザックさん、真面目な顔して沈黙されちゃあ、不気味なんですけど?
「………………………………….」
 何考えてるんだ、君は?
「猊下?」
 あぁ、やっと口をきいた。
「なに?」
「今日の俺の格好をどう思います?」
「どうって……、似合ってるよ?」
「他には?」
「う~ん。かっこいい、かな?」
「他には?」
「惚れ直した、とか言って欲しいわけ?」
「いえ、そうじゃなくて、それもうれしいですけど。つまり……、男の格好を形容すると大体そういう言葉になるでしょ?」
「後は『ステキ』とか『豪華』とか『シャレてる』とか、かな?」
「ええ、まず『きれい』とか『美しい』とかは言わないでしょ?」
「確かに、よほどのことがない限り言わないね。」
「でしょ? で、きれいとか美しいって言うと?」
「着てる人も含めて、やっぱり女性に対して言う表現かな?」
「その中でも一番豪華で、誰もが美しく見えると言われるのは?」
「ウエディングドレス?」
「だから、俺はあなたの『一番美しい姿』が見たいんです。」
「へっ?」
 なんだ、この三段論法は!?
 こらっ、赤くなるな、村田健!!
「あなたは今のままでもとてもおきれいですよ? でもね、あのウエディングドレスを着たら、もっと美しいと思うんですよ。
 それには今日しかないでしょ? だから、どうしても見てみたいんです、少しの間でいいですから。 
 ……本当に、本心からおイヤですか? それでしたら諦めますけど。」
 僕は本心からイヤか?
 そうじゃない。
 ただ……ほんのちょっと、抵抗があっただけ。
「君の口説き文句は、ウェラー卿とはまた違った威力を持ってるね。」
「アイツと比べないでください。俺はあなたにだけ威力を持っていればそれでいいんですから。で?」
「ほんのちょっとだけだよ。君が見たらすぐ脱ぐからね。」
 まったく、本当に、僕は、ヨザックに、甘い。

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