勢い良く流れていた水音が止まって次に聞こえてきたのは、カチャ、キュッキュッキュッ、コトッ、カチャ、キュッキュッキュッ、コトッ。
 そんな生活音を聞きながら、フッと思い出してしまった。

「ねぇ、ヨザック。」
「なんです?」
「君、どんなの着るつもりだったの?」
 手を拭きながら、フリフリエプロン姿のヨザックが顔を覗かせる。
 この姿を『変』って思わなくなったのは似合ってるからでも慣れたからでもない、単に無視してるだけ。
「何をです?」
「だから……、ウエディングドレス。」
「いきなりですねぇ~。」
「なんかコレ読んでたらさ。」
「ああ、『猊下に直撃! 新婚生活一問一答』ですか。「魔族自身」のインタビューなんてよく応じましたね。あそこは庶民向けの記事が多いのに。」
「今回は情報戦略の一環だからね。あまねく僕が結婚したことを広めないと。で?」
「『今回は』ってのは気になりますが……、ほんとに知りたいんですか?」
「う~ん、あんまり。でも、思い出しちゃったんで、一応確認しておこうかなって。」
「一応ですかぁ~? まあ、良いですけど。ちょっと待っててくださいね。」
 そう言いながらベッドルームに消えた。
 えっ!?、まさか、買ってないよな? でもって、着てくるなんてこと、ないよな?

「ジャジャ~ン、お待たせしました!! コレで~す♪」

 
「やっぱり買ってたんだ……。って、それはウエディングドレスじゃないだろ!!」
「えぇ~、そんなことないですよぉ!! 純白でフリフリ、このアタシの肉体美を最大に引き立てる最高のデザイン!!」
 ああ、ほんと、悪夢にうなされそう。断固拒否して正解だった。
 僕はおもむろに立ち上がると、そのままポーズを決めている(らしい)ヨザックの横を通り過ぎ、ベットルームへ。
「猊下、どうしたんです? 猊下ぁ~」
 再びヨザックの前に出たとき、僕はパジャマからいつもの服に着替え、枕を小脇に抱えていた。
 そう、また渋谷のベットを占領しにいこうと思って。
 あっ、どうしてもヨザックのドレス姿を見たいってゲテもの好きな人は止めないけどね。
 僕は見ないよ、ほんと悪趣味としか言いようがないから。
 じゃ、おやすみぃ~。
「そんなことないですよね? 似合ってますよね?
 じゃなくて、もう着ません!!、今脱ぎますから!!、猊下、行かないでぇ~!!」

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