遺体の見つからなかった父さんをどうやって葬ったのか。
「ここに?」
「他に思い浮かばなかったのよ」ムラタァの墓の隣に真新しい土の色。
「何を埋めたの?」
「ヨザックがいつも使ってた短剣。持っていくのを忘れるなんて珍しいって思ってたのよねぇ」その口調は悲しさより可笑しさの方が勝っている。
「あれって年季入ってたもんな。子供んとき、欲しいって言ったら『お前にはまだ早い』って言われてさっ」どこにでも売っているごく普通の短剣だったけど、父さんが使うとなんにでも使える万能な道具に見えた。
「あら、欲しかったの? それじゃあ他のものを埋めれば良かったかしら。ほら、お気に入りのドレスとか?」
「母さん、さすがにそれはないだろ。短剣で良かったんだよ。俺は自分で買ったし。それより、俺の仕事ってもしかして……」
「そう。墓碑に刻む言葉を考えてちょうだい」
「そういうことは文才のあるベネラに頼めば良かったじゃないか」
「あの子は『記事ならいくらでも書けるけど、これは兄さんの仕事』って言ってたわ。私もそう思ってる」
「……この墓碑と対になるようになんて書かないぜ?」ムラタァの墓碑は読めるし、意味も知ってる。
「いいわよ。息子として父を語ってちょうだい。それから、陛下がヨザックの友人として話がしたいからいつでも城に訪ねて来て欲しいって。この後、いってらっしゃい」

「母さん、これにしようと思うんだけど、どうかな」
散々悩んでまとめた短文を見て、母さんは「いいわね。ヨザックをよく表してる」と言ってくれた。
出来上がった墓碑を並べてみたら、結局ムラタァへの返歌らしきものになっていた。思い出だけの存在だったムラタァはやっぱり俺たち家族の一員だったんだ。

『夏空に輝く太陽のように
 明るく、穏やかに世界を変えた父は今、
 その光で常に私たちを抱いている』

*****

ともかく、王都に戻った俺とエッダは、乗り合い馬車でルッテンベルクに旅立った母さんを見送った。

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