眞魔国の庶民向け学校は陛下が始めたんだそうだ。絶対に通わなきゃいけない義務クラスの授業は、半日入れ替え制で読み書き、計算、料理と工作が主な内容。とにかく生きていく上で必要な知識一通りたたき込まれる。あと、月に一日ずつ、音楽の日、美術の日、野球の日がある。
但し、なにしろ成長速度が異なるから入学時の年もバラバラだし、卒業年数も子供によってだいたい6年〜15年くらいかかる。

学校から帰ってきて過ごす半日は家に寄って異なるが、俺とベネラは週に二回、剣の稽古に行かされた。
「今どき、剣の稽古なんてしてる子いないよ?」と尋ねると、父さんは「そりゃー自分の命を守れなきゃ、いくら学問ができたって意味ないだろ?」って。内心、時代が違うのになぁとも思ったが、成長してさまざまな国で商売する今はとても感謝している。
それにしても、家にいると必ず「どこまで強くなった?」って相手をしてくれるのだが、稽古では教わらない『実践的』な──いわゆる、汚いやり方での──も伝授してくれて。その戦い方ときたら、本当にえげつなかったなっ。
結局、俺はそこそこ使えるくらいにしかならなかったが、ベネラは軍からスカウトされるくらい上達して「人には向き、不向きがあるものよ」なんて父さんの受け売りをしたり顔で云うまでになった。この当時、背丈まで抜かされて、俺の兄としての立場がまるっきりない時代だ。

学校が休みになる夏や冬は家族ごとルッテンベルクに移住した。そこで王都ではしない、馬や馬車の扱い方、畑仕事、村での生活を教えられた。初めて行ったとき、領主館の主のような振る舞いに(うわっ、父さんって金持ちぃ!!)ってビックリしたっけ。
領主館の元管理人で、もう隠居してたリリーさん──父さんの育ての親らしい──というおばあさんは母さんのことをとても気に入っていて、会いに行くと「ヨザックだけでなく、お館も任せるわね」と良く云っていた。
でも、この人、母さんには優しいのに俺たち子供には怖かったな。庶民には見ることも使うこともない高級な家具や建物の歴史、部屋の装飾、貴族の生活について覚えされられた一方、メイドとして掃除・洗濯、コック見習いとして料理、執事としてテーブルセッティング、給仕としてサーブの仕方、客やオーナーとしての会話やテーブルマナーも学んだ。おかげで、どんな城や貴族の館に行ってもさりげなく教養ってやつを披露するんで見下されることもないし、正式なディナーも臆することなく出席できる。もちろん、俺がオーナーになって人を招くこともだ。これは商人としてやっていくための社交術として父さんが頼んだんだろう。

義務クラスの後は、もう少し高度な内容や外国語、職業訓練などの選択クラス。ここからは授業料がかかるので王都や各領地の首都、大きな街だとかなりの子が、村だと数人ほどが進学する。
俺の場合は「どうするんだ?」と希望を聞かれることなく進学させられた。
「俺が汗水垂らして稼いだ金なんだからなっ、さぼるんじゃないぞ」と父さんは恩義せがましく云うし、フリッツさんは「卒業できなかったらウチでは雇わないよ」と脅すし。
俺が通った外国語クラスでは人間の国の言葉と歴史が必修、そのほかに選択授業を2つ取ることになっていた。

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