†2. 渋谷有利 -2-

俺も両親も今まで通りで良かったんだが、結局、大学を終えて生活の場を眞魔国に移した。
「渋谷、変わんねーな。ガクラン着てたら中坊にみえるんじゃね」とか、「あら、有利君。いよいよ来年は高校卒業ね」なんてあっけらかんを云ってくるならいいが、辻端会議中のおばさんたちが俺をちら見してなにごとかをささやきあったりすることが増えてくると、やっぱこのままは無理っぽいって覚悟した。それに、俺の施策を進めるには云ったり来たりじゃ難しくなってきたのも事実だ。

「陛下、今回のリストです」
「もうそんな時期なんだ。どれどれ……えっ?」
村田のアドバイス以外にもいくつか地球の制度を取り入れた。その一つが表彰制度。
外国船が着岸できるよう、ヴォルテール領の港湾組合が自主的に桟橋を拡張したおかげで輸出が拡大、観光客も増え、地元が潤ったことが始まりだった。それから、開墾して農地を広げたり、街道を整備したり、人を助けたり、つまりはそういう人たちを城に招いて表彰するってこと。
領主のみんなに提案すると、彼らの答えは「そのようなこと、して当たり前では?」
「んー、でもさっ、誰だって褒めてもらったらうれしいだろ?」
それで数年おきに表彰してるのだが……「カロリア漁業共同組合がヨザックを? 推薦理由は『溺れた子供を救助。眞魔国では優れた行いをした人を表彰されていると伺ったので』かっ。妥当な理由だね」
「しかし、行為も推薦者も国外ですが」
「ヨザックの行為で眞魔国の評判が上がったんだぜ。いいじゃないか、表彰しようよ」

大広間に集まった人々の前で、国軍の式服を身に着けたヨザックに改めて声をかけるって、なんかこっちが照れ臭い。
「よくやってくれた。ありがとう、ヨザック」
「恐れ入ります」
「コホン。それでは、グリエ・ヨザック、報奨として望むことを陳べよ」
かなりもったいぶった言い方だが「お前は普段軽々しいから、行事のときくらいは重々しく、魔王らしく格好をつけろ。受ける方もその方が有り難がるぞ」ってヴォルフが云うもんだから。それに、報奨については事前に事務方と打ち合わせてほぼ決まってる。聞いた話では『休暇』だって。ちょっと意外だったけど、いつもつい頼っちゃってるし、その程度で良いのかなと思ってた。
メダルを首にかけてニコニコと微笑んでいた彼は「恐れながら申し上げます」と云った後、まじめな顔つきでこう言った。
「休暇を……無期限でいただきたく存じます」
「えっ、ちょ……」(話が違うぞ?!)
慌てた俺が周囲を見回すとギュンターは唖然としてるし、グウェンはこめかみを押さえてるし、事務方は書類をめくって打ち合わせの内容を確認してるし、来賓たちはざわめき出すし。一人、ヨザックだけが冷静に俺を見ている。
こんな状態で言える言葉は「望みを叶えよう」しかないじゃん。

これ好き
ハートをあげる!! 1
Loading...