祝宴は続いていたが、夜も更けて退席した俺はヨザックを私室に呼んだ。
「へーかー、お呼びですってぇ」
いつものように、陽気に俺の私室に入ってきたヨザックはしかめっ面のグウェンに気付くと「かっかぁー」と可愛らしく手を振って席に着いた。
「なあ、ヨザック。休暇はダメっていうつもりはないよ。でもさぁ、無期限ってのはちょっとなぁ」
「そこをなんとかお願いします。しなきゃいけないことがあるんですよ」
そう云った彼の声に潜む真剣さに、俺はまだ気付かなかった。
「うん。長いつきあいなんだからさ、なんか理由がなきゃそんなこと云わないことくらい分かるよ。なっ、グウェン?」
(あっ、話をふっちゃマズかったかな)
「そんなに休暇が欲しければ、軍を辞めればよいのだ」
(うっ、いつも以上に腹に響く低音)
「よせよ、グウェン。そんなこと云って、本当にヨザックが辞めたら困るだろ」
「あら、辞めませんよぉ」
「ならば、無期限などとたわけたことを云わず、期限を設けろ」
「うーん、それはできない相談でして。ねえ、閣下。人の寿命に期限がつけられるとお思いですか」、もう彼はふざけても、笑ってもいなかった。

「俺はチキュウに行くたび、猊下の様子を見守ってきました。猊下が伴侶を得て子を成し、家族に囲まれた生活をお過ごしなら、こんなこと望みません。でも、いまだにお一人なんですよ。だから、俺がついててやらなきゃ……最後まで」
しばらく地球に帰ってなかった俺は『元気でやってる』って勝利の報告書でしか村田の様子を知らなかった。
「それじゃあ『もしかしたら結婚するかも』って会わせてくれた歴代の彼女たちとは?」
「結局、どなたの手もお取りのなりませんでした。ところで、陛下。ご自分が何歳か覚えてますか?」
「えっと……たぶん……50代。うん、60は越してないな」
「62才ですよ」
(マジ?!)
「もちろん、猊下はおモテになるから、この先伴侶を得るかもしれませんけど。それまでで良いんです」
(なんて優しい笑顔なんだ)、「ずっと地球で見守るのか?」
「まあ、できればこっちにお連れしたいとは思ってるんですが。うんとは云わないでしょうね」
村田が眞魔国を去った理由を考えれば、そうだろう。
「あいつは頑固だからな。どうせならかっ攫ってくるくらいの気持ちで行けよ」
「自分のこと以外だと、とぉーても強気ですね。へーか」
そうして仕事の引き継ぎやら細々とした個人的なことを済ませると、ヨザックは地球へと旅立っていった。
10年後、俺がたき付けた言葉通り──なのかな──村田を連れ帰ったヨザックの休暇は、最後を見取って終わった。果たして、ヨザックにとって長かったのか、短かったのか。

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