彼がいなかった間も施策は続き、地球から帰ったものたちが制度やカリキュラムや教科書などを作り、各地で実践し、義務クラスの上に選択クラス、さらに教師を養成する師範学校も造った。
「えー、魔王陛下もご列席いただき、国立第三師範学校の卒業パーティーを開催いたします」
パーティは始めから飲めや歌え状態。若者ばかりだからその発散するエネルギーは凄まじいばかりだ。中盤、今年の卒業生26名が舞台に上がり、学生生活や今後の活躍を口々にスピーチタイムが始まった。彼らの夢を語るその姿が楽しくて、うれしくて、俺は必ず参加している。
最後に教師たちが卒業生たちを語り、それで終わるはずだった。
「最後に……グリエさん、スピーチを」
「待ってました、グリエさん」
「そうそう。一言お願いしますよ」
師範学校の教師たちはほとんどが地球でヨザックの世話になっているし、ときどき学校にも顔を出しているので生徒たちとも面識があった。まあ……兄貴分みたいに思ってるみたいだ。
「では、一言だけ」、舞台に上ってそう言うと彼はまた俺の度肝を抜いた。
「国内に教育が行き渡るのはみんなの力にかかっているからなっ、がんばってくれ。そして、陛下。優秀な教師が増えた今、そろそろ人間の国に教師を派遣ってのは、いかがです?」
(ハイ?)
自身の爆弾発言に静まりかえった会場を満足そうに見回し、悠然と舞台を降りた。

「ダンヒーリー様がしてた、人間の国で生まれた混血を眞魔国にってのを批判する気なんてさらさらないし、ここに連れてきてもらって俺はほんと感謝してるんですよ。ただ、逃れる機会を得たものしか来れないとか、生まれた土地では生きていけないってのは……違うってずっと思ってたんです」
会場の熱気溢れる様子を見ながら満足そうにベランダで涼んでたヨザックはこう切り出した。
「俺は……魔族でも、混血でも、人間でも、自分の好きなところで生きていけるのが一番良いと思うし、そういう世界にしたい。それが兵士を志した理由でしてね。子供の頃、自分のしたいようにするためには周囲が納得できるだけの実力を持てってある人に言われて。今なら叶うんじゃないでしょうか」
確かにそうかもしれない。表舞台には登場しないが、俺が眞魔国を運営する上で彼の力は不可欠になってる。
「云いたいことは分かるよ。で、それと教師の派遣ってどうつながるんだ?」
「ねえ、陛下。眞魔国同盟がどうしてできたかって考えたことあります?」
「んー、自然に……じゃないかな」
「いいえぇ、あなたに会ったからですよ。魔族で最強の魔王だけど、人としてのあ・な・た・に」
ヨザックは心の底から愉快だって笑顔で言い切った。
「陛下は人間たちがそれまで持っていた『魔族は恐ろしい、世界に破滅をもたらす』なんてイメージをきれいさっぱり捨てさせたんです。ただ、残念なのは、それは陛下と知り合えた人たちだけなんですよ。でも、教師が人間の子供たちに魔族とはどういうものかを教えたら、もっと多くの人たちのイメージが変えられるかもしれない。それに、人間たちとの交流が増えれば混血もきっと増えるでしょう。人間の国に生まれた子供たちに魔族の特性を教えていく、それも魔王として考えなきゃいけないことじゃないですか?」
「そうか、子供たちが魔族に対して抵抗がなくなれば親もいくらかは影響を受けるし、その子たちが親になって子供を持つようになれば……か、なるほど」
「3世代、100年くらいかければずいぶんと変わると思うんですよね」
魔族にとっての100年なんて、中期計画ってところだ。

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