眞王との戦いが終わって村田が眞魔国を去るとき、これから俺が注意すべき点をいくつか書き残した。主に、教育と人口統計と気象観測。教育は分かるけど……と思いながら読んでいてやっと事の重大性が理解できた。

一、魔族は成長が遅く、その上、子どもの数も少ない。一方、今でも移民を受け入れてる眞魔国では、今後人間の数は増えていくだろう。つまり、これは今まで以上に人間と混血の数が増え、純血魔族の人口は減少していくということだ。大多数の臣民を領主や貴族たち一部の特権階級が支配するとどうなるか、地球の歴史を思い出してくれ。純血貴族と混血と人間をうまく融合させていくのは並大抵のことじゃないぞ。だから、毎年じゃなくて良い。例えば5年単位くらいで調査して種族ごとの人口を把握しておいた方が良い。いずれ、眞魔国は人間と混血が大多数の国になる。それでなくても強力な魔力持ちは今でさえ少ないんだ。これからの国づくりは魔力はないものとして考えてくれ。

一、眞魔国は精霊に守られていたから──かどうかは別にして──これまで人間の国ほど大災害にも異常気象にも見舞われていない。そのせいか観測や分析、記録、対策、これらが他国に比べて劣っている。精霊と盟約を結んだのは眞王であり、新たに結び直したのは君だけど、君の退位後、盟約がどうなるか分からないと考えた方が良い。なにしろ精霊は気まぐれなところがあるからね。
異常気象の結果、食物の取り合いから戦争になるのは今までの歴史を見れば明白だ。

一、教育の重要性は君もよく分かっていると思ってる。全臣民に一定レベルの教育は必要だけど、これまで書いてきたことを含め、国を運営していくにはさまざまな分野のスペシャリストも必要だ。各分野の基礎だけでいい、地球の知識を少し利用してもいいんじゃないか? サングラスかけたデニーロもどきのボブって知ってるかい? もし君が知らなくても大丈夫、勝利さんが知ってる。奇行ばっかりしてるけど、結構、力あるんだぜ。奴をうまく利用してくれ。

最後に。
この世界最強の魔力&自力でスタツア可能な君の力をどう使う?
僕も君と同じように強制的に世界を進歩させる気はない。だけど渋谷、僕がここまで書いた理由を考えてみてくれ。

俺は何度も読み返し、グウェンとギュンターに相談して十貴族会議に提案した。
純血魔族の減少予想に「まさか、そんなことがあるはずない」と云っていた彼らも、「なに云ってんだよ。誰か調査した? してないだろ。反証もなしに言うなよ」と云うと口を閉ざした。
だからといって、すぐに人口調査できるわけじゃない。なにしろ、今までしなかったことをするんだ。
「陛下、よろしいか」
「ん、なに?」考え込んでた俺は聞きなれた低音に顔を上げた。
「各領地に住む、魔族と混血と人間の数を調べれば良いのだな。だとすれば、昔から税額を決めるために10年ごとに記録しているはずだ」
「いや、フォンヴォルテール卿。確か種族まで記録せよとの通達は出ていないはずだ」
「フォンラドフォード卿のところでは記録されていないのか、我が領地では以前より記録していますぞ?」
「僕の領地もぉ記録してるよぉ」
口々の発言を整理してみると、フォンカーベルニコフ卿、フォンギレンホール卿、フォンラドフォード卿、フォンウィンコット卿の領地では種族まで記録していることが分かった。
「だったら話は早い。次の記録から種族も記録してよ。それを集計すればいいじゃん」
「ユーリ、人数だけでいいのか? 年齢・性別はいらないのか? それと、どこの部署に送れば良いんだ。決めるならそこまで決めろ」
領主見習いで参加していたヴォルフラムは相変わらずストレートな物言いだが、言ってることは正論だ。
「陛下、実際の調査は村や街の役場単位です。制度を変えるなら間違いなく行えるよう最低でも1年前には布令を出さねばなりません」
「分かった。次の調査はいつ? 4年後か。よし、新しい部署を一つ作って計画を進めよう。ギュンター、人選してくれ」

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