遡ること13年前の出会いからの説明を勝利から聞いて、「あの人、俺たちの将来を知ってて、ずっとストーカーしてたんだ」俺はボブの超長期間計画に飽きれるとともに、魔王としての時間の使い方が分かった気がした。
「まずは人選だな。言葉や歴史なんか一切を教え込む方法があったとしても、こっちの社会に順応できなきゃ耐えられないだろう。それに、見かけは欧米人ってことなら外国の方が紛れ込みやすいはずだ。何年くらいこっちで生活させるつもりだ? 10年も20年もってなると年取らないことで不審がられるぞ。存在しなかった人間の人生を偽造しなきゃいけないって分かってるか?」
頭の良さってこういうところに出るんだな。俺はこんな風に問題を整理できていなかった。
じっくり時間をかけて一つ一つ解決策を話し合い、なんとか計画がまとまってボブにメールすると、ホセ・ロドリゼスと連絡を取るようにって返事があった。スカイプしてみたら知った顔。
「村田の『先生』だよね?」
「そーだよ、久しぶり。それにしても、またあのマシンを使うとは思わなかったよ。それで、その人はいつ来るんだい? コンラッドに使って以来だからデータを更新しなきゃ」
「まだ、誰にするかも決まってないんです。多分、半年から1年先になるんじゃないかな」
「それじゃあ、決まったらその人の年齢、ああ、見かけのね、体型とか性格とか教えてね。その人自身の地球での生い立ちもインプットするから」
こうして俺が単純に考えていた計画は国家プロジェクトになっていった。

「それで、何人必要なのだ」
「まず、コーディネーターとしてしばらく地球に住んでくれる人が欲しい。実際に教育を受けさせる人はたぶん若者だろうから、親とか祖母祖父あるいは叔父叔母とか、まあそんな感じに見えるような年頃の人がいい」
「現役か退役かは問わず、国外経験のある諜報員という条件なのはなぜだ」
「危険を察知できるし、身を守る方法も心得てる。多少のことには驚かず、新しい環境への順応性がも高い……んじゃないかな」
「しばらくと言ったが、陛下の計画ならおそらく行ったきりを覚悟しなければならないのではないか? めぼしいものに話すことはできるが、退役した部下はもう私の部下ではないのだから強制はできん。現役のものに命じるには──」
「これは命令じゃなく、十分に納得した上で志願してもらわなきゃいけない話だってことは分かってる。その上で、候補者を選んで欲しいんだ」
グウェンの眉間のシワは深かったが、それでも承諾を得た。もめたのは連絡係の人選だ。
「グリエだと? 現役一番の諜報員を単なる連絡係に徴用するのか?」
「単なるじゃないよ。送り出す彼らが暮らすのは日本じゃない。勝利たちが面倒見てくれるだろうけど、俺も知らない国だから、俺の目になってもらわなきゃ。だからグウェンもヨザックを使うんだろ?」当然だけど、反論はなかった。

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