「コーラーとは『Caller=呼ぶ人』で、そうですね、声を送ることだけができるのです。おそらくその言賜巫女と云う方は送受信できるのでしょう」
以前、『眞王廟の巫女たちの役目は眞王陛下のお声を聞くことです』とウルリーケは云っていたが、聞く力と呼びかける力、きっと彼女は両方とも強いのだろう。
プールサイドにスタンバった二人に「それじゃあ、ウルリーケって呼んでみてください」と声をかけた。ビーチチェアに腰掛けた二人は力を抜き、目を閉じて深い息をしている。しばらくすると、プールに小さな水柱が立ち、スーツケースが浮かび上がってきた。
「ゆーちゃん、ヨザックって奴が来るんじゃないのか?」
「はぁ……勝利って頭良いくせに変なところが抜けてるんだな。実験もしないで人を送るなんて危険だろ? だからまず、荷物で試してるんだ。それじゃあもう一度、届いたから引き取ってくれってお願いします」
2回スーツケースで実験して、二人もコツを飲み込んだようだ。
「今日はこれまでにして、明日の本番に備えて休んでください」

翌朝、昨日と同じように座った二人は俺の合図で念を送り始めると、スーツケースの時より高く昇る水柱の中に人影が見えてきた。
「きたきた。ヨザック!!」
「へーかぁ、スタツアって結構厳しいっすねぇ」
「そうだろ? 俺は毎回なんだぜ。まっ、そのうち慣れるって。ほらっ、こっちに上がってこいよ」
二人のやり取りを聞いていた幼いフォースは「陛下の言葉、変わっちゃった」とつぶやき、親しげな様子に勝利はムスッとしている。
「紹介するよ、彼はグリエ・ヨザック。まずは彼にこっち……んっ、どうかした?」
「ゆーちゃん、一体どこの言葉をしゃべってるんだ?!」
「えっ? あっ、ごめん。俺の中では区別してなくって。あー、今は日本語しゃべってる?」
頷く勝利を見て「それじゃ、やり直すよ。彼はグリエ・ヨザック。彼にはまずこっちの世界に慣れてもらって、この後くる人たちと俺との連絡係をしてもらうんだ。ヨザック、彼らは……俺、魔族語しゃべってる?」
「陛下、僭越ながら。まずは彼のその濡れた服を着替えさせた方が良いのではありませんか?」

ヨザックにバスルームの使い方を教えて、彼が降りてくる間に先生がマシンを用意するのを眺めていた。
「これ使ったら、俺も英語話せるようになるかな?」
マシンを調整している先生に聞いてみたら、「もちろん。でも、オススメはしないよ、一時的に記憶が混乱するんだって。しばらくすれば大抵の人は元に戻るけど、中には元の自分に馴染めなくて人格が変わっちゃうこともあるから。あっ、でも実験中だったときのことだけどね」
「自分では試してないんですか?」
「だって、僕が変わったちゃったら大変でしょ?」
(なんか……アニシナさんみたい)と思ったが、口には出さなかった。

ヨザックが戻ってきたところでみんなに今後の予定を説明した。
「まず、ヨザックは先生のマシンでこっちの知識をマスターすること。で、3ヶ月こっちの生活を体験して地元民並みになってもらう。その後、コーディネータ2人を送るから1ヶ月ほど彼らの様子を見て眞魔国に帰ってきてくれ。コーディネータの準備が整ったら留学生を送る。とりあえず留学は5年間くらいを予定してる。その後はメンバーチェンジするかさらに滞在するかを検討する。リオさんとフォースはその間の迎えと送りを頼みます。先生はヨザックとコーディネータの面倒をお願いします。んー、計画はこんな感じなんだけど……俺、なんか忘れてないかな」
「そのにやけてるオレンジ頭に云っとけ。費用は全部地球持ちなんだから無駄遣いすんなってな」
もちろん勝利の言葉の意味など分かっていない。だけど、口説き文句と罵倒は言葉が分からなくても確実に伝わるらしい。ヨザックは凄みを効かせた笑顔を見せた。
「まあまあ二人とも。これから長く付き合うんだから初めっからけんか腰はやめろよな」
本当はもっと居たかったけど秋の連休は短く、俺たちは日本に戻ってきた。結構アバウトな計画だけど先生がついてるし、大丈夫だろう。
帰国した翌日、ビデオメッセージが届いていた。日本語を話すヨザックってなんか変な感じだ。

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