†3. ハナ -2-

陛下は臣下の進言を聞き入れ、上級師範学校の講義に人間の国の歴史や風土などを加えた。そして、大使を各国に派遣し、了解を取り付けて人間の国に眞魔国と魔族について授業できる教師を送り出してきた。
そう進言したグリエ・ヨザックという人は大シマロン生まれの混血で、過酷な収容所から逃げ出し、ついには陛下のお側に仕えるまでになった、とても優秀な人だと聞いた。その時から私は自分でも気づかず憧れていたのだと思う。

子どもながら『眞魔国にいる人間とはうまくやっているのに、なぜ他国の人間は魔族を嫌悪するのか』を知りたかった私は、迷わず師範学校に入学した。人間の国に行けば、この疑問が解消されるのではないかと思ったからだ。
国内の学校で経験を積んだ後、教師派遣の募集に応募、念願叶ってカヴァルケードの中流家庭の子たちが集まる学校に派遣された。
授業を拒否する親もいたけど、週に一時間の授業に出席した子どもたちは熱心に聞いてくれ、最後のクラスには「子どものころからずっと憧れていました。私はもう大人です。先生、結婚していただけませんか」という子もいた。早い子は10年も経つと親になり、年が過ぎるほど魔族を拒否する親は少なくなり、請われて授業する学校は3校に増えていた。

ある年、学校の創立記念日にグリエ・ヨザックが来ると聞いた私がどれほど胸ときめかしたことか。スピーチするため登壇したその人は会場でもひときわ背が高く、美しく、たくましかった。
慣れた口調で参加者から笑いを引き出し、分かり易い言葉で人間と魔族との違いなど取るに足らないことを訴えた。
熱狂的な拍手を受けて優雅に会釈しつつ演台からフロアへと降りてきた彼に思わず駆け寄り、「素晴らしいスピーチでした」、上ずった声で称賛した。
彼は私がつけていた眞魔国の教師を示すブローチに気づくと「ありがとう。授業はうまくいってる? 必要なことがあったら必ず言ってね、援助は惜しまないから」と微笑み、やってきた校長と連れ立って行ってしまった。その後ろ姿に小さな声で「どうして、ドレス?」と問いかけだが、もちろん答えはなかった。

「ああ、グリエのドレス姿は……確固たる自信で周囲の異論を封じ込めてしまう、彼独自の場を支配する方法だったと思うわ」
「そうですか? とてもあでやかで、似合っていたと思いますけど」
「それは……まあ、そういう見方もあるでしょうね。それで、どうしたの?」

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