†4. ヨザック

2日ほど続いた嵐が過ぎると、港に避難していた船の何艘かは難破し、その瓦礫が港を封鎖している。海べりの村では複数の家が倒壊、避難した人々が広場に集まり、聞こえてくるのは「こんなひどい嵐は初めてだ」。火災こそなかったが、まさに戦場のようだった。

「お客様にご案内いたします。申し訳ございませんが、しばらくこの港から船は出ません。お急ぎの方は陸路、岬を回ってボリの港から出る船をご利用願います」
「ここでの予約料は払い戻してくれるのかぁ?!」
「ボリに行くのに自腹かよ!!」
「俺の行き先はボリからの航路がねぇんだぞぉ!!」
運行会社の窓口は嵐の間宿に缶詰めにされていた乗客たちで混乱している。
「いただいた予約料金は返金いたします。ボリへの馬車は弊社で半額負担いたします。臨時航路が増発されるとの連絡来ていますので、どうぞ、どうぞ、ボリをご利用願います!!」
船や港の被害修復だけでなく乗客たちへの補償も加わって、この船会社の存続は危うくなるかもしれない。(まいったな、この港からが最短で国に帰る航路なんだが)

ピストン輸送の駅馬車でボリの港に来てみると思ったほど人がおらず、窓口で尋ねると「そりゃあお客さん、この時期の目玉といやぁ『ヴァン・ダー・ビーア島の火祭り』。島の港は大丈夫だったんだが祭り会場が目茶苦茶なんでひと月順延ってことに決まりましてね、みんな乗船を取りやめたってわけなんすよ。眞魔国行き? お客さん、魔族かい? それなら、こっち側の船を待って出港するって連絡が来てるよ。どうする、乗るかい?」
ボルからはヒルドヤードを経由していくため2日ほど余分にかかるが、眞魔国行きが待っててくれるなら問題ない。人間の国のと航路は半月に一度、これを逃したら半月無駄に過ごすことになる。

晴天の翌朝、出港した船は航路を進み、昼過ぎ、予定通りヒルドヤードに到着した。ここからヴァン・ダー・ビーアへは翌朝出港の船に乗り換えるため指定された宿で手続きし、懐かしさに街をプラプラ歩いていると新聞社を見つけた。
(ベネラはいるかな)
受付で名前を言うと「あいにく取材で外出しています。夜には戻ると思いますが……伝言がありましたらお伝えします」
「そうですか。それじゃあホテル・フロリアンに泊まってるので、夕食を一緒にどうかと伝えてください。あっ、俺、父親です」、最後の言葉で受付嬢はクスッと笑いを漏らした。
人間には魔族の年が分からないので、ハンサムが誘いに来たなんて噂になったらベネラだって釈明しなきゃいけない相手がいるはずだ。いや、いて欲しい。まったく、あいつはいつまで独り身でいるつもりなんだ?
「ベネラ主任と似ておいでですね」
「そうかい? 俺に似て美人だろ?」(……親バカなのは承知してる)
朗らかな笑い声を背に新聞社を出て再び街を歩き、来るかどうか分からない娘をホテルで待っていた。

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