Section 6

創主の再来を皆に伝える必要はなかった。
衝撃は怒濤のように広がり、人々は武器を手に立ち上がっていた。
「問われるまでもなく、我らは参りますぞ。アレが一つでも残っておればすべてが滅ぼされてしまう。そうですね、軍師殿」

大陸を縦断する山脈を越え、その向こう側がどのような土地なのかを知るものは少ない。
「これだけの人数が山越えできる道は」
「はい。道は4本。一番広い道は馬車も通れますが大回りとなり12日ほど。他は抜け道、かなり急なで2人がやっとですが、ほぼ6日で山越え可能」
「戦地までの距離は」
「向こう側の麓からおよそ15日」
「今度の創主はどのようなものか」
「元からほとんど凍った地のため、今のところ人家への被害はございません。ただ……野火がこのまま広がれば人や畑や村を飲み込むのは必定」
「それは本当に……創主なのか」
「どなたかご存知かっ!! 水でも砂でも土でも消えぬ青白い炎を、触れたものを一瞬にして灰とする炎を!!」
軍議の参加者から矢継ぎ早に聞かれる質問に疲れきった伝令は息を乱しながら懸命に答え、激情のままに言葉を放つと気を失った。
「このものを寝台へ、十分に休ませてやれ。それから、向こう側を知るもの、山を知る猟師を探せ」

「あの……お呼びと聞きやして」
腰を曲げ、周囲を伺うように幕を上げて入ってきたのは顔を覆う伸びたヒゲが印象的な、いかにも猟師という風情の男だ。
「もっと近くに来い。これだけの軍をできるだけ早く山越えさせたい。道案内を頼めるか」
「へい。でも、わしら猟師が使うのは獣道だで、こちらの旦那がたがその立派な格好でとなんとなぁ」
「そうか。それでは鎧なし、一人当たり剣二口、弓一張に矢立、盾一帖、それに7日分の食料と水。これでどうだ」
「馬もお諦めくだせぃ」
「馬もか? 同じく4本足の獣だぞ」
「熊やオオカミの臭いに怯えまさぁ。それに喰わせなきゃなんねぇ。なにより、枝に払われて首の骨折りたかぁねぇでしょ? ねぇ、旦那がた」
「確かにそうだな。では、布令を出せ!! 装備の整ったものから100名、先陣としてこのものに続けとな。他のものは馬を連れ、補給部隊と共に大回りの道を使え。それから、怪我人の同行は許さん」
一同慌ただしく駆け出していく、眞王陛下と私を残して。
「さて、ここに残していくものだが──」
「ベラール殿に頼みましょう。ここはあの方の土地、それにあの傷では参戦できませんから」
「そうだな。ところで、今度のをどう思う?」
「今のところはなんとも。ただ……なにを以てしても消えぬというのは、やはり変だとは思います」
「風の次は火か。{我}と名乗るあ奴らが操るものすべてに波及したとしたら……厄介だな」
(『厄介』……その程度の言葉で創主を語るのですか、あなたは)
「俺は先に行くぞ」
「私は向こうの様子をもう一度詳細に聞き出し、策を考えながら大回りの本陣と共に参ります」

軍幕から出ると先ほどの男と同じような格好のものたちが地面に図を書きながら何か話し込んでいる。
「どうかしましたか」
「こりゃ、軍師の旦那。崩れて通れねぇ道があるってんで、他の道を相談しておりやした。ご案内できそうなんは3本。一本ずつわしら二人でご案内しますで」
「そうですか、よろしくお願いいたします」
「ところで、山を下りたところはそれぞれ離れておりますんで、どっかで集まって待っとる方がいいですかのぅ?」
「いえ、一日休養をとったら先に進んでください」
「へい。おっしゃる通りにいたしやす」
(元からの差6日に、馬を走らせ徒のものに追いつくのに3日か4日。先陣に合流するころには戦地まで半分来ていることになるな)

気に入ったら↓のハートをクリックしてね
これ好き!! これ好き 1
読み込み中...