生物学上、俺の父にあたる王は、若い頃は富や権力には目もくれず、世間に通じ、人望も厚い人……だったらしい。
欲深い先王に嫌気がさした重鎮たちはそんな彼に懇願し、無血クーデターまがいに王座に就いた。とされる。どうせ、王が編纂させた歴史だ、どこまで本当のことかは分かったもんじゃない。
事実、王座に就いて暫くすると隣国との戦争が起こり、それを機に王は人が変わったように領土の拡大を押し進めるようになった。度重なる戦争はもはや、その目的が国土安定なのか、領土拡大なのか、あるいは財宝と美女収集なのか分からなくなっていった。
彼を王にと望んだ重鎮たちはその変容に戸惑い、また、王も、かつて先王にしたように、自分をこの座から引き下ろそうと誰かを差し向けてくるのではないかと警戒し、国内は欺瞞と策謀が支配するに至っている。
王が最も警戒したのは、皮肉にも自分の息子たちだった。『歴史は繰り返す』あるいは『因果応報』、どちらでも良い。王位に就けるのは王の血を引く者だけだ。
それに対して王が取った施策はこうだ。
『今後、後宮で生まれた王子たちは6歳になったら、王の決めた家が養う。また、16歳になったら歩兵として軍属となること』
これだけ聞けば別にどうということもない。だが、実際に王の決めた家は全て、その王子の母親の生家と対立する家だ。
こうすれば、王子は母の生家から援助を得られず、疎遠となり、預けられた家は好まざる子ながらそれなりの身だしなみ、教育に金を使わなくてはならず、扱いが悪ければ、王はそれを理由に財産の没収、刑罰、あるいは死罪をも命じる。という裏があった。
母親の地位が低い王子たちは自分の地位を危うしそうにもないと思われたのか、家柄も低く、大した財産もない家に預けられた。そのため、王子が入隊する頃には破産する者もいた。
戦争が始まれば歩兵は消耗品、己が手を下さずとも誰かがその命を奪ってくれる。
なんとも身勝手なやり方だ。
俺も本当ならそういう家に預けられるはずだった。
そんな周りの状況が分かってきた7〜8歳のころだろうか、養い親である老人に尋ねてみた。
「なぜ、あなたが俺の養い親なんですか」と。
先王や現王は彼を軽んじていたが、代々王家の歴史編纂と教育係を務める旧家で、俺のような低い身分の王子の養い親になるには高位すぎる気がしたのだ。
「4人の息子を亡くして静かになってしまった我が家を、明るく賑やかにしていただけるのではないか、と思いましてな」、そのとき彼はそう云って俺を誤摩化した。

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