秋になれば16歳。
館に、街に、自分の意志とは関係なく、あらかじめ決められた自分の将来に、いつか自分も策謀の渦中に放り込まれ、殺されるのではないか、そんな思いから、早くここから逃げなければ、と思うようになっていた。
大した額ではないが時折与えられる金を密かに貯め、この国の支配下にない国に抜ける道を探し、軽装でも野宿できる夏に計画を実行しようとしていた初夏。
「王子。よろしいですか?」
深夜、図書室で地図を見ていた俺に老人が声をかけた。
「なにか?」
「なに、季節もよくなりましたので荘園の様子を見に行こうと思いまして。ご一緒に行ってはいただけませんでしょうか」
「東の、ですか?」
「いえ、北のです。そろそろあちらも暖かくなりますから、行商の船も港にやってくるでしょう」
(港、船!)
都に一番近いのは軍港なので始めから考慮の対象ではなかったが、北の荘園に近い港なら元々小さな漁港で警備も緩い。だが、なぜ今、老人はそれを口にするのか。
「この館でお預かりするのもこの夏まで。王子が軍に入れば終わりますのでな。いかがですか? 実はもう王宮には許可を取ってあるのですよ」
言葉に隠したものは視線が訴えていた、お逃げなさい、と。
それから数日、俺たちは額を寄せて計画を練った上、他の貴族たちがするように荘園へと旅立った。

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