ヨザックに起こされ、ぼんやりしながらサイドテーブルのカップに手を伸ばし……(あれ?)と止めた。
いつもなら陶磁器なのに今日はガラス製、ほんのり色づいたお茶の中に花が咲いている。束になった薄いピンクの花弁は細く、先端は軽くしゃくれてて、厚物の菊のミニチュア版だ。
(工芸茶? まあ、紅茶が盛んだからあっても不思議じゃないけど)
「きれいでしょ、味も良いんですよ。あっ、でもちゃんとそのミトンを使ってくださいね」
さすがに耐熱ガラスはまだ開発されていないのだ。僕好みのすこし温めのお茶を口に含むと匂いや味は中国茶を思わせる軽くて爽やか、なんとなく……懐かしい感じ。
「美味しいね。こっちにもこんなのあるんだ」
「ええ、キカルの名産品なんですが、この時期限定なんで今まで猊下にお出しするタイミングが合わなくて」
「そっかぁ。んっ、限定? 地球じゃ年中あるけど」
「そうなんですか? この花はこの時期、山奥にしか咲かないんですよ。それでお茶に入れて飲むと長寿を得る……って魔族には関係ないんですけどね」
彼はこういう配慮をさりげなくするのだ。

深夜、忍んできたヨザックは寝室に溢れる花の香りに足を止め、怪訝な顔をしている。きっと(花なんてどこにもないのに……)って思っているんだろう。
「来ないの? ……ヨザァ」
首まですっぽり布団で覆った僕は片膝を立て、揺すって見せた。
「なぁ〜に企んでるんですぅ〜」と言いながら上着を脱ぎつつ近づいてきた彼は上掛けの端を持ち上げて、驚きにまた動きを止めた。
「もっと大胆にめくってごらんよ」
白いシーツは鮮やかな深紅の細かな花びらが散らばり、その上に素肌で寝そべる僕を見て言葉が出ないらしい。
「なん……で……どう……して……」
「地球では花に溜まった夜露で体を拭いたりするんだよ。君はこっちの方が好みだろ? どう、僕と露まみれになってみない? そうだ、露を飲むってのもあるな」
「クククッ、それじゃ猊下の露をたっぷり溢れさせなきゃ」
「僕のだけじゃなく、君のもだろ。さぁ……長寿を楽しもう」

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