「これ、お母さんに渡しなさいって先生が」
「ありがとう。あら、これは毎年の案内ね」
僕の通う幼稚園では、毎年クリスマスにプレゼント交換会が催される。飾り付けられた大広間のツリーの前に座った、サンタに扮した園長先生が大きな袋から園児たちにプレゼントをくれるのだ。

『父兄のみなさまへ
  クリスマスプレゼント交換会の開催とお願い

 今年は12月21日金曜日、園児たちが楽しみにしているクリスマスプレゼント交換会を開催いたします。例年の通り、父兄の皆様にはプレゼントをご用意いただきたく、ご案内申し上げます。

1、ご用意いただくプレゼントについて……ご購入の場合、金額は2,100円(税込)まで。
  例年、明らかに高額なものをご用意される方がいらっしゃいますが、
  渡される園児への公平を期すため、くれぐれも金額はお守りくださいますよう
  お願い申し上げます。
  手作りされる方も同様に過度な金額をおかけにならないようご配慮願います。
  また、アレルギーを持つお子様もおりますので、飲み物、食べ物、
  さらに取り扱いに注意しなければいけないものはご遠慮ください。
2、包装について……購入店のものではなく、お手数ですがご家庭にてお包み直し願います。
3、リボンの色について……男子は青系、女子は赤系をご利用ください。
4、プレゼントは12月20日までに当園までご持参願います。
※ くれぐれもお子様に見つからないよう、よろしくお願い申し上げます。

今年も遊び心溢れるお父様、お母様がたのご活躍を園児たちと共に当園関係者一同、楽しみにしております。』

その日はクリームの浮かんだホットココア──乳性アレルギーの子には別なもの──とおやつを食べ、学年ごとに先生に引率されて大広間に向かう。
「園長先生だぁ!!」
「今日はサンタだよ」
「おっきなツリー、いいなぁ。ウチのは小さなプラスチックなの」
「はぁ〜い、みなさん、静かにぃ〜。サンタさんからのお話ですよぉ〜」
「ホウ、ホウ、ホウゥ。みんな、今日はどんな日か知ってるかな?」
「プレゼントがもらえる日ぃ!!」
「そうだね、この一年『いい子だった』子に、ご褒美のプレゼントをあげる日だよ。みんな、いい子にしてたかい?」
「してたぁ!!」
「それじゃあ、私が呼んだら前にくるんだよ。ああ、それから、プレゼントは家に帰ってから開けること。サンタとの約束だからね」
「はぁ〜い!!」
みんなの返事を聞くと、膝に置いた袋から一枚紙を取り出して「いまい ゆきちゃん、前においで」。
次々と名前が読み上げられ、男の子には右の袋から、女の子には左の袋からプレゼントが渡されて行く。
(あっ、僕んちの包み紙!!)
お母さんは隠してたけど、ゴミ箱に捨てられた紙の切れ端からプレゼントを見分けることができた。
(彼がもらったんだ。なにが入ってるか知らないけど、気に入ってくれるといいな)
揺すったり、重さを確かめたりしている様子を見ていたら、自分の名が呼ばれた。
「村田くん、今年はどんな良いことをしたんだい?」
臨時サンタの問いかけに「お母さんのお手伝いしたし、女の子には優しくしてあげた」と答えると、「そうか、良い子にしてたんだね。ほら、サンタからのプレゼントをあげよう」
小さな箱が僕の手に乗せられた。

初めて渋谷の部屋に行ったとき、興味津々であちこち眺めていると棚の上にレゴブロックのヘリコプターを見つけた。
「レゴ、好きだったなぁ。僕も同じのを持ってたよ」
「ああっ、あれか。幼稚園のクリスマス会でもらったんだけどさぁ、興味なくって。結局、親父が喜んで作ったんだ」
(あっ……そうだったんだ)

彼女のいない僕たちにクリスマスなどどうでもよく、年末に開催されたダンディライオンズの忘年会は当然のごとくプレゼント交換などなく、ひたすら食べて飲んで──未成年はもちろんジュースだ──満腹感での帰り道、「なぁ、渋谷。今年は年賀状、くれるだろ?」
「なんだよ、いきなり。おれ、年賀状なんか書いたことないぜ。だいたい、こうやっていっつも会ってるし、改まって新年のご挨拶ぅ〜なんていらないだろ?」
(園長先生、僕はこの一年ものすごく良い子にしてました。彼に云ってやってくださいよ、できないことじゃあないんだから、親友のささやかな願いを叶えてやれって)
「そうだ、来年は外野の守備を強化しようと思うんだ。それで──」
(いや、彼には叶えてほしい、もっと大きなことがあるんだ。それでも……50円でいいんだよ、誰にも送ったことのない、年賀状がほしいんです)

これ好き
ハートをあげる!! 7
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