二人、裸で横たわったベッドの上。

無性に気になって、そっと手を伸ばしてみた。
触れた先の皮膚はさっきからの熱を帯びたままだ。
その下の肌の予想通りの固さに、声にならないまでも感心していたら、声を震わせて男の身体が捻れた。

「な、…何、ですか?」
腹ばいになって、下を隠したまま裸のヨザックが吼える。
もう少しだけ触りたかったのに、と思いながらも挙動不審の男に、ねぇ、と呼びかける。

「君、また少し筋肉ついた?」

抱かれていて気付いた。

久しぶりに触れた身体は、回した腕の感じだとか、当たる感覚が以前のそれとは、なんと無く違った。
久しぶりとは言っても、さして間を空けたつもりはなかったから、僕の勘違いだろうかとも思った。
けれどさっき触れた腹は確かに、以前よりも増して鍛えられた弾力と厚みがあって。
ヨザックの顔を覗けば、 まあ一応 と答えが返ってきた。

わかります?と聞かれて、なんとなく、と答える。
「腕回したら感覚違うし、…太った様には見えないしね」
鍛えてんだ、と言ったら。
それなりに。と、当然のように言葉が返って来た。

何で今更?と思いはしたが、言葉には出さずとも思考は顔にでていたようで。
少し笑ったヨザックが、一呼吸おいてからそれに応えた。

「何かですねぇ。猊下に触れれば触れる程、鍛えなきゃなぁ?とか思っちまうんですよ」

そうなる理由が分からず考えあぐねれば。

「頼りないというか、危なっかしいとい言うか、ほっとけないというか、…」
それを察したヨザックの不本意な言葉。

「失礼なっ!そこまで子供じゃないよっ!」

それじゃぁまるで落ち着きのない小学生みたいじゃないかっっ、と訴えてみるが『小学生』なんて単語をヨザックが知る筈もなく。
不思議そうな顔をするばかり。
それでも、機嫌を損ねたのは理解したようで、口先ばかりの謝罪を言ってのける。

「…馬鹿にして…」
素直に不満を訴えてみるが、既に其処は鍛え上げられたヨザックの腕の中。
…これほど無駄な抵抗もない。

「そういう意味じゃないんですがねぇ」
そう言って、そんな僕の顔を覗き込むヨザックは、さっきまで良い様に僕を玩んでいた時とは違う困り顔な笑み。
それを誤魔化すようにして、開く言葉はさっき以上の妄言だ。
「でも、実は鍛えるのもドレスが似合わなくなっちゃいそうで、ちょ?おっと不安だったんですよね?」
「言ってなよっ」
「ハハハ。」
そんな適当な物言いが面白い訳もなく、この男に何とか反撃を試みようにもこの体制じゃどうしても不利で。

「…僕も鍛えてみようかな?」
「は?」
「だって僕だけひょろひょろじゃあ格好悪いじゃないか」
今だって充分に不本意だ。
「幾ら草食系男子がもてはやされる時代でもそろそろ陰りを見せる頃だろう?
 僕もこのままじゃ駄目だと思ってはいたんだよね。
 渋谷だって付かないなりにも鍛えて少々見れる身体になってきたし僕も負けちゃられないよね?」
「ちょ、ちょ、ちょっと猊下!待って下さいよ」
畳掛けるように吐き捨てれば目の前の大男はそれは哀れな慌てっぷり。

「本気で鍛えるつもりですか?」
「うん」
「あ?ごめんなさい止めて下さいお願いします」
素っ裸のまま正座でお願いしてくる様はとても眞魔国一の敏腕諜報員とは思えない。

「なんでさ?」
「嫌、あの…」
「?はっきり言いなよ」
「…はぁ、あのその…」
はっきりしないヨザックに段々とイライラが募れば、それを察したヨザックがやっと口を割った。

「…猊下のそのか細い身体の線も魅力の一種だと申しますか」

……は?
一瞬にしてフリーズする僕を余所に、ヨザックは妄言を続ける。

「その、身体を繋ぐ時にあたる骨がちょっと痛くて、
 それが何か壊れそうで、けどそれがまた結構クルと言いますか……」
「…は?」
今度は実際声にでた。

「……何、そのマニアックな思考」
「…すいません」
「第一、僕は筋肉付きにくいんだよ。鍛えようにも肉自体が付かないの」
よく考えてみなよ、と、そこまで言って、何で素っ裸でこんな話してるんだか、と自分で馬鹿馬鹿しくなってくる。
「だからさ、君みたいなマチョ男にはなり得ない」
何をそんなに心配することがあるのだろうと思いながら、目の前にある、筋肉フェチの渋谷で無くとも惚れ惚れするような胸筋に触れる。
…ボディビルダーにでもなるつもりか?

そんな事を考えて指先で触れれば、ヨザックの身体が小さく揺れた。
瞬間、少々の悪戯心が湧く。

触れるのを止めて屈み込んだシーツの下。
緩やかなランプの灯りが透けて見えるのを気にしながら、形の綺麗なヘソを舐め上げればその身体が大いに跳ねた。
その拍子に、思わず曲がったヨザックの見事なひざ蹴りを食らわされ、痛みに思わず顔を歪めたが、それでも構う事無く、腰のあたりに舌を這わせれば、がばっっとシーツを剥ぎ取られて、真っ赤な顔と目が合った。

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